犬が言えない「助けて」のサイン。外飼いが与える心身のダメージ

外飼い 卒業宣言

犬の外飼いは、暑さ寒さ・感染症・脱走事故・ひとりで過ごす時間の長さという、命と心に直接かかわるリスクに犬をさらします。
外飼いの犬が出す「助けて」のサイン、室内へ移す5週間の手順、どうしても外で飼うしかない場合に守ることをまとめました。

目次

外飼いが犬に与える4つのリスク

① 暑さと寒さが命に関わる

真夏は気温35℃以上になり、コンクリートやアスファルトの地面は60℃近くまで上がることがあります。
真冬は氷点下や冷たい風にさらされます。

犬は汗をかいて体温を下げるしくみが人間ほど発達していないため、暑さの逃げ場がない場所につながれていると熱中症になりやすく、夜間の冷え込みでは低体温症の危険があります。
どちらも命に関わります。

アメリカのペンシルベニア州では、2017年に成立した動物虐待防止法(通称リブレ法)で、気温が華氏90度(約32℃)を超えるとき、または華氏32度(0℃)を下回るときに、犬を30分を超えて屋外につなぐことを禁止しています。
違反すると罰金や拘禁の対象になります。
屋外で飼う場合も、断熱された犬舎・日除け・水の確保が条件です。

日本にはこうした気温の数値を定めた規定はありませんが、動物愛護管理法で飼い主に適正な飼育が義務づけられています。

② 感染症と寄生虫にさらされる

屋外は衛生管理が難しく、感染症や寄生虫のリスクが高くなります。
ノミやダニはアレルギー性皮膚炎やバベシア症の原因になり、フィラリアは蚊を媒介として感染し、命に関わることがあります。
湿気や汚れが続けば皮膚の炎症や真菌症も起きやすくなります。

排泄物の処理も遅れがちになり、汚れた環境で過ごす時間が長くなります。

寄生虫や感染症の予防は、動物病院で処方される予防薬で行います。
屋外で飼っている場合は特に、予防を欠かさないでください。

寿命についてよく「外飼いの犬は室内犬より何年短い」という数字が出回りますが、出典によって年数がばらばらで、確かめられる根拠が見つかりませんでした。
そのためこの記事では年数の比較はしません。
一般社団法人ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査では、犬全体の平均寿命は14歳台で推移しています。

外飼いで問題になるのは年数そのものより、暑さ寒さ・感染症・事故という命に直結するリスクに毎日さらされること、そして体調の変化に気づくのが遅れやすいことです。

③ ひとりで過ごす時間が長くストレスがたまる

犬は群れで生きてきた社会性の高い動物です。
外でひとりきりの時間が長い生活は、不安と緊張が続く状態になります。

通行人・車・物音に反応し続けることで警戒心が慢性化し、孤独から夜鳴き・吠え癖・物を壊すといった分離不安の症状が出ることがあります。
散歩以外の刺激が少ないため、欲求不満もたまります。

こうしたストレスは、問題行動や攻撃性の原因になることがあります。

④ 脱走・事故・近隣トラブル

鎖の劣化やゆるみ、驚いた拍子の脱走は外飼いで多いトラブルです。
脱走すると交通事故や咬傷事故が起こり、見つからないまま迷子になることもあります。

外で吠え続けることによる近隣トラブルから、飼育をあきらめてしまう例もあります。

外飼いの犬が出す「助けて」のサイン

犬は言葉を話せないぶん、行動で気持ちを伝えようとします。
外飼いの犬に次のような様子が見られたら、「もっとそばにいてほしい」「今の環境がつらい」というサインかもしれません。

1つめは、必要以上に吠えることです。
通行人や物音に反応し続けている場合と、人を呼んでいる場合があります。

2つめは、鎖やリードを噛み切ろうとすることです。
その場から離れたい、そばに行きたいという強い欲求の表れです。

3つめは、餌を食べないことです。
ストレスのほか、体調不良の可能性もあります。

4つめは、同じ場所をぐるぐる回る、体をなめ続けるといった動きを繰り返すことです。
退屈や不安が続いたときに出やすい行動です。

これらは体の病気が原因のこともあります。
急に食べなくなった、ぐったりしている、体をなめ続けて皮膚が赤いといった場合は、環境を見直すのと同時に、動物病院で診てもらってください。

外飼いから室内飼育に移す5週間の手順

いきなり家の中に入れるのではなく、少しずつ範囲を広げると犬が混乱しません。
目安は5週間ですが、犬の様子を見ながら進めてください。

1週目は、玄関の土間に犬の居場所をつくり、1日のうち数時間を家族と一緒に過ごします。

2週目は、廊下や洗面所まで動ける範囲を広げます。

3週目は、リビングにいる時間を増やしながら、トイレのしつけを始めます。

4週目は、夜も室内で過ごすようにし、専用のベッドを置きます。

5週目で完全な室内飼育に切り替え、それまで使っていた外のスペースは閉じます。

長く外で暮らしていた犬でも室内に移せます。
最初は環境の変化に戸惑いますが、多くは2〜3か月で慣れていきます。
最初の壁になりやすいのはトイレのしつけです。

どうしても外で飼うしかない場合に守ること

住まいや家庭の事情で、どうしても外でしか飼えないこともあります。
その場合も、命と健康、心の安定を守るために最低限の工夫が必要です。

夏の遮熱・冬の保温・防風

夏は、直射日光を避ける屋根や日陰をつくり、打ち水や遮熱素材で地面が熱くなりすぎないようにします。
犬小屋は通気性のよいものを選び、風の通り道を確保してください。
新鮮な水をいつでも飲めるようにし、容器の水がぬるくなっていないかも確認します。

冬は、風が直接当たらない場所に犬小屋を置き、中に毛布や断熱シートを敷きます。
保温ヒーターを使う場合は電気の安全基準を守ってください。
雨や雪で濡れない構造にすることも大切です。

声かけとふれあいを毎日欠かさない

外飼いの犬は孤独になりやすいことが最大の問題です。
群れで生きる習性を持つ犬にとって、誰とも触れ合えない時間が続くことは強いストレスになります。

朝と夕方に必ず声をかけ、時間を決めて触れ合う時間をつくってください。
できるだけ一定のリズムで接すると犬が安心します。
外出や帰宅のときにも、目を合わせて短く挨拶をします。

一緒に過ごす時間を意識してつくる

外飼いでは一緒にいる時間がどうしても短くなるため、意識して確保します。
朝晩の散歩を義務ではなくふれあいの時間として使い、休日は庭で一緒に座るなど、そばで過ごす時間を増やしてください。

涼しい日や寒くない時間帯には、家の中やデッキに入れる時間をつくるのもよい方法です。

室内飼いが主流になった背景

かつて犬は番犬として門の前につながれ、外で過ごすのが一般的でした。
今は室内で一緒に暮らすスタイルが主流です。

室内飼いが広がった理由には、気温や天候から犬を守れること、体調の変化に早く気づけること、清潔な環境を保ちやすいこと、食事と水の管理がしやすいこと、予防接種や定期健診など動物医療を受けやすくなったことがあります。

一緒に過ごす時間が増えると、犬の感情や体調の変化にすぐ気づけるようになり、日常の中で自然にしつけやコミュニケーションができます。
犬が安心して過ごせることで問題行動が減ることもあります。

高齢になったときの介護も、室内のほうが対応しやすくなります。
寝たきりになっても目が届き、体位を変える・水を飲ませるといったケアがしやすいためです。

「室内飼い=愛情がある」と一概には言えませんが、健康・安全・精神面のどれから見ても、今の日本では室内飼いのほうが犬の負担が少ない環境だと言えます。

「外飼いはかわいそう?」への答え

「外で走り回れるほうがいいのでは」「昔はみんな外で飼っていた」という声もあります。

ただ、住宅事情も気候も昔とは変わりました。
猛暑や酷寒が続く今の日本では、屋外は犬にとって逃げ場のない環境になりやすく、外飼いは当たり前の飼い方ではなくなっています。

近所の外飼いの犬を見て「かわいそうだな」と感じたことがあるなら、その感覚は間違っていません。
すぐに室内飼いへ切り替えられる家庭ばかりではありませんが、今の飼い方が犬にとってどうかを一度考えてみることが、犬の暮らしを変える最初の一歩になります。

よくある質問

長年外飼いだった犬を室内に移すのは大変ですか?

シニアでも移せます。
最初は環境の変化に戸惑いますが、多くは2〜3か月で慣れていきます。
最初の壁になりやすいのはトイレのしつけです

体が大きい犬でも室内で飼えますか?

サークルと専用スペースを確保すれば対応できます。
小型犬・中型犬は完全室内が基本です

夜だけ外で寝かせるのはどうですか?

すすめられません。
夜間こそ寒暖差が大きく、防犯の面でもリスクがあります。
夜こそ室内で過ごさせてください

近所の外飼いの犬が心配です。どこに相談できますか?

お住まいの自治体の動物愛護センターに相談できます。
保護犬になる背景には外飼いに関係するケースもあります(保護犬ボランティア9種類と始め方|無理なく参加するコツ

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